【メンタルヘルス不調からの職場復帰支援のコツ④】本人要因

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【メンタルヘルス不調からの職場復帰支援のコツ④】本人要因

前回までは、複数回にわたって、復職の失敗例として「職場側の要因」を取り上げてきました。今回は、「本人側の要因」について、触れていきたいと思います。

生活が整う≠復職が可能

生活が整う≠復職が可能

復職の判断について

復職が可能となった状態、とはどのような状況と理解すればよいでしょうか。

まず、休職に至った病気や症状が治まっている(完治もしくは寛解)ことが前提となります。「うつ病」「抑うつ状態」などの診断名で療養に入ったとすれば、眠り、食欲、意欲、行動面、などでの改善がみられる必要があるということです。

この改善具合は、通常主治医によって医学的な根拠から判断されます。加えて、本人が「復職したい」という意志が表明されていることも必要な要件ですね。

本人の復職の意志と、医学的な根拠からの症状の改善、これらが見られた際には、一義的に復職可能と理解できるかもしれません。

しかし、この状況で「復職」させた場合に、どのようなことが起こるでしょうか。

「復職可能」の診断書と本人の希望をもとに、例えば、いきなりフル勤務で復職させた場合、翌日から「朝起きられませんでした」と体調不良で欠勤が継続…良くある事例と思います。

ここで問題となってくるのは、医学的な観点からの改善(体調や症状の安定)と、業務の負荷に耐えることが出来る状況までの改善、は必ずしも同一ではないということです。

もちろんのことですが、主治医は休職者を「労働者」とみる前に「患者」とみるわけです。患っている症状を取り除くもしくは軽くすることに、専門的な知見を活用します。

症状が安定した際に、本人から「復職したい」との希望が出れば、復帰後にどのような業務を行うのか、限定した情報しか持ち得ていない主治医は、条件を付けながらも復職を否定することは難しいと思われます。

多くの企業様では、ここで産業医の先生の登場となるわけですが、産業医として、復職面談で積極的にかかわってくださる先生がすべてではないのも現実ですね。主治医からの診断書や意見書をそのままに、会社に面談結果をお伝えになることもあり得ます。

このような場合、会社が求める復職の基準を満たしていない状況で、職場復帰がなされてしまうことがあるのです。結果、上述したような復帰直後の欠勤という出来事も起こりえますね。

では、復職の基準をどのように定めたらよいのか。また、復職に当たって、どのような情報をだれから求めればよいのか、これらについては、次回以降で触れさせていただきます。

復職の基準について

先の記事でも触れておりますが、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」においては、復職時の検討事項(復職判断の要素)について、以下の5点が示されています。

  • ①労働者の職場復帰に対する意志の確認
  • ②産業医等による主治医からの意見収集
  • ③労働者の状態等の評価(治療状況及び病状の回復状況の確認、業務遂行能力についての評価、今後の就業に関する労働者の考え、家族からの情報)
  • ④職場環境等の評価
  • ⑤その他

①は復職可能の診断書を本人が提出してきている場合には、その旨確認できる事柄です。

ただし、復職希望の背景に「会社(上司)側からのプレッシャー」「金銭面でのあせり」「復職満了期間前でのあせり」などが隠れていないかは、きちんと把握したいところです。

②については、医学的な復帰の根拠について、また、復帰後の配慮等について判断するための対応であり、産業医が対応してくれる場合であれば、対応は任せられます。

ただ、本人同意の上、人事労務部門としては、「今後の治療方針」「復職にあたっての注意事項」「すぐに主治医に連絡すべき事項」については、産業医経由で確認したいところです。特に、病態や症状によっては、不調の「サイン」が個々に異なりますので、早急に産業医や主治医と連携すべき「サイン」などがある場合は、本人含めてしっかりと確認したいところです。

③④⑤については、人事労務担当者として悩ましいところですね。

まず③については、主治医、産業医から復帰に際しての体の準備が出来ているとの判断であっても、どれぐらいの準備レベルなのか、担当者として把握することは難しいと思います。可能であれば、療養中から、以下の項目などについて「〇、△、×」といった評価で、面談時の情報などから随時回復を評価していくのも一つの方法です。※カウンセラーや産業保健スタッフがいれば専門職の対応望ましいと思います。

  • 復帰の意欲について(働きたいと積極的に思っている。業務をこなしたいと思う。)
  • 所定労働時間の業務が可能か(本人の感覚、カウンセラーの評価、主治医の評価など)
  • 眠りが安定しているか(入眠困難や早朝覚醒が週0日~1日程度のレベルまで回復か)
  • 生活リズムが整っているか(起きる時間、寝る時間、食事の回数など)
  • 集中力や思考力が回復しているか(少なくとも図書館などで所定労働時間、週5日、集中力思考力を保って過ごすことが出来るか)
  • 不調の要因や経過について、自分なりに整理が出来ているか(本人の面(認知の偏り)、環境面、共に)
  • 気持ちや体を休める習慣や時間を作れているか(土日の過ごし方など)
  • 不調のサインを把握しているか(頭痛・腹痛・腰痛・肩こり・イライラなど様々)
  • 不調時のつなぎ先を認識できているか(主治医、産業医、産業保健スタッフ、人事労務担当者、上司など)
  • 治療(服薬)について、主治医からの指示をきちんと守れているか
  • 復帰後の業務や生活について、どのようなことを意識していきたいか、意識していくべきか整理できているか。

これらの事項を、療養中からの面談が可能であれば、本人と評価を確認し、回復を共有していくことは意味があると考えています(〇や△が増えていくことを確認できること自体、自信につながり意味があることも)。

④については、復職プログラムや復職プランをしっかりと関係者で共有することがまずは大切です。

その上で、復帰予定の管理監督者自身の受け入れに対する気持ちを確認し、必要に応じて情報提供(本人の医療に関わる情報の場合には、本人同意を取ること)や、カウンセラーなどによるコンサルテーションも実施出来ればなおよいと思います。

特に休職復職を繰り返してしまっている職員の復帰に関しては、立場に応じていろいろな感情が生まれてくるのは同然と感じます。

⑤については、上記で述べた確認事項など以外での特記事項、例えば家族間の問題、お金の問題、ハラスメントの問題など、復帰に関して特別留意すべき事項があれば検討します。必要に応じて、家族との連携も視野に入れる場合もある事項ですね。

「心の健康問題」については、考慮すべき範囲も広く、個別性も高い事柄です。一人で抱えずに、産業医、産業保健スタッフ、主治医、上司、など周りを良い意味で巻き込み、複数の目から情報を集め、合理的な判断を心掛けたいところです。

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