【コロナ禍でのメンタルヘルス②】フォローアップ中の在宅勤務

目次
質問
メンタル不調から復職し、フォローアップ期間中にコロナの影響から「在宅勤務」となった従業員がいます。
どのような対応が必要でしょうか。
回答
「復職プラン」の作成
「フォローアップ期間中の在宅勤務」ということですね。
まず確認したいのは、この方のフォローアップについて、「復職プラン」は作成されていますでしょうか。
「復職プログラム」と「復職プラン」を分けて説明します。
復職プログラムについて
一般的に「復職プログラム」とは、その事業場でのメンタルヘルス不調者の、不調発生から療養、復職判定、そして復職後のフォロー、までを整理したものです。
厚生労働省からは「職場復帰支援の手引きとして「5つのステップ」が示され、このステップに沿って、対応する人間やその役割などを取り決める場合も多いと思います。
【参考】厚生労働省:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
復職プランについて
「復職プラン」は、会社としての一般的な業務フローではなく、当該復職者のための個別の復帰後のフォローアップ計画です。
メンタルヘルス不調からの復職に際しては、「復帰の基準をクリアしたのだから、元職で所定労働時間からの復職。残業務あり」といきなり仕事をさせる事業場の方が少ないのではないでしょうか。
もちろん、主治医や産業医、また社内カウンセラーなどの診断書や意見書から「復職可能」が判断され、事業場で定められた基準をクリアしてきたのですから、すぐに従前同様の勤務を求める事もあるかもしれません。
しかし、多くの企業では運用上「制限勤務」から始めておられます。
職場や業務に徐序になれて、復職を確かなプロセスにしたい、休職復職を繰り返させたくない、安全配慮義務の視点から慎重に行いたい、このような理由からですね。
復職プラン作成に当たっては、次の項目に留意してください。
- 復帰後の業務の量の制限
- 復職後の業務の質の制限
- 復職後の残業や出張の制限
- 個人の特性についての配慮
- 関係者(人事、産業医(社内カウンセラー)、上司、本人)の共通理解
- フォローアップ面談
- 柔軟なプランの変更
一例として、最初の2週間は午前勤務、その後の2週間は15時までの勤務、その後2週間は残業なしでの所定労働時間の勤務、そして、残業や出張の解禁。
それぞれのステップを上げる際には、上司が週に1回、産業医や社内カウンセラーが月に1回、程度の面談から、本人の回復具合や心身の状況をみて、会社としてタイミングを判断していくのが一般的でしょう。

在宅勤務中の「復職プラン」
当初の「復職プラン」には、もちろんコロナの影響からの在宅勤務は想定されていなかったことと思います。
在宅勤務中の復職プランについては、以下の点を注意すべきと考えます。
- 就業環境の変化
- 上司や産業保健スタッフから目が届きにくい
職場から自宅での就業環境の変化は、物理的な場所の変化だけでなく、朝起きる時間、食事の時間、寝る時間、など生活リズムの変化をもたらすことも考えられます。
また、サポート環境に変化のある方もあるでしょう。
会社で声をかけられて話ができる方が、一人暮らしの在宅勤務でほとんど話をすることが無くなるケースもあります。
環境の変化は、一般的には負担(ストレス)と感じられ、症状の回復を阻害したり悪化する要因となる可能性もあります。
ただし、在宅での勤務の方が、「ここちよさ」を感じる方もあります。
「会社に行かなければならないプレッシャーがない」「上司の目を感じなくて済む」「電話を取らなくて済む」「社会全体が『コロナ』に目が向いており、自分に目が向いていない感覚がある」などの理由を聞きます。
アンテナが敏感な方は、自分よりも「社会」「上司」「同僚」に目が向きがちなので、在宅勤務が「ここちよく」感じるのでしょう。
このような場合は、状態を安定化させ、回復に寄与することもあり得ます。
また、上司や産業保健スタッフの「目」が届きにくい点も、注意すべき事項でしょう。
面談自体実施することが困難で、Webで実施となっても、表情やしぐさ、身だしなみなど、対面ほどの情報が得られない場合もあります。

在宅勤務中の会社の対応
では、上記の注意点がある中で、人事や産業保健スタッフとして、在宅勤務での復職支援について気を付けるべきことは何になるでしょうか。
- 本人の特性の把握
- 業務量の適正化
- セルフケア(自分自身で変化や不調に気づくこと)の強化
- Webやチャットを使った情報収集
- 相談窓口の提供
本人の特性の把握
上述したように、在宅勤務をストレスと感じる方かそうでないか、は大きなポイントです。
神経質で周りに配慮しすぎる方で在宅勤務が安定に寄与する方なのか、一人暮らしでサポートの低下や環境の変化が大きなストレスになる方なのか。
「在宅勤務はあなたにとって、負担になっていますか?」という質問で、確認できるかもしれません。
業務量の適正化
「~ねばならない」が強い方は、在宅勤務中だからこそ、しっかりと成果を残さなければならない、勤務時間中は業務だけに集中しなければならない、と過大な負荷となる可能性があります。
職場であれば、「ほどほどにな」「今日は15時までの勤務だよな」といった声掛けも在宅勤務では難しくなります。
制限勤務中の業務量の範囲を明確にして、1日の作業量を決めておくのも一つかもしれません。
勤務時間中に、1日分の業務が完了すれば、関連する勉強等に時間を当ててもらうこともよいでしょう。
簡単な日報を書いてもらうことも管理のしやすさにつながるかもしれません。
セルフケアの強化
在宅勤務ではどうしても、人事や上司、また産業保健スタッフとしてのケアに限界が生じます。
自分の変化は自分自身でいち早く気づき、適切な対応につなげたいところです。
病気によって様々ですが、不調のサインを知ることは可能です。
ある方は、頭痛や腹痛から、ある方は怒りっぽくなったり眠れなくなったり、大きな体調不良の前に何かしらサインがあるはずです。
これらに加えて、メールの返信が遅くなった、共通のチャットシステムでの発言が少なくなった、テレビ会議での表情がさえない、など、在宅勤務特有のサインも見逃せない点です。
「生活リズムチェック表」などをあえてつけてもらい、生活リズムや心身の反応からサインを見逃さないように指導することも意味があると思われます。
Webやチャットを使った情報収集
管理監督者としては、在宅勤務での管理業務に限界を感じている方も多いのではないでしょうか。
結果と共に、プロセスを評価に反映する会社にとってはなおさらだと思います。
その様な中で、復職者のケアも必要になるのは負担感を生じさせてもおかしくありません。
このような時こそ、人事労務担当者や産業保健スタッフ、また、社外のカウンセラーに、定期的な情報収集のWeb面談などで情報収集をお願いしましょう。
相談窓口の提供
職場で契約しているEAPや、加入している健康保健組合で提供している相談窓口、また公的な相談窓口など、活用できるサポート資源は積極的に情報提供してください。
もちろん、何かあった際の職場の担当者の連絡先もあらためてお伝えください。