【コロナ禍でのメンタルヘルス④】 在宅勤務を希望する復職

目次
質問
メンタル不調にて休職復職を繰り返し、復職直後のフォローアップ期間中にコロナの影響で在宅勤務になった従業員がいます。「在宅勤務の方が体調が安定するので、このまま在宅勤務を希望する。出来ないのであれば、間接部門への異動をお願いしたい」との要望が出ました。どこまで対応すればよいのでしょうか。
回答
休職復職を繰り返す従業員の理解
メンタルヘルス不調での休職を繰り返す従業員の特徴は何ですか?と聞かれたときに、以下の視点で考えることができると思います
職場の問題
- 復職プログラムの作成がなされていない
- 人事労務側で担当する人間がいない
- 復職の判断が不十分
- 復職プランが柔軟に運用されていない
- 休職を繰り返すことに対して、規則や規定が整備されていない
従業員側の問題
- しっかりと病気の治療が行われていない(寛解、治癒)
- 性格や人格の面での偏りやこだわりが強い
- 会社や家族に対しての「甘え」の考えが強い
- 復職に向けた練習が不十分である
- 「症状」の改善だけでなく、生活スタイルや性格面の偏りなど、お薬以外での取り組みが不十分
まずは、どのような問題が重なっているのか、把握したいところです。本ケースの詳細は分かりませんが、複数の問題が重なっていることは想像されます。「在宅勤務の方が体調が安定するので、このまま在宅勤務を希望する。出来ないのであれば、間接部門への異動をお願いしたい」というのは、本人側の甘えが強い可能性もあります。メンタルヘルス不調ということを盾に、権利を強く主張しがちなのかもしれません。
元職での復帰
復職直後は、元職にて復帰し、業務をこなせていたと仮定します。元職もコロナの影響で在宅勤務になったのであれば、元職が「在宅勤務が前提の業務」ということではないということだと思います。ましてや、「在宅勤務」が雇用契約上結ばれていたとは思えません。復職後は元職に復帰できるまで回復していたなかで、本来的な業務を遂行できていたと考えます。
コロナが落ち着き、元職が在宅勤務から出社での勤務に戻るのであれば、そのまま元職での業務を行わせることが妥当と考えます。「病気のためにできない、させられない」ことと「やりたくない」ことは切り分けて考えたいところです。
もちろん、医学的な根拠から、「出社での業務は心身の反応をきたすので不可」ということであれば会社での仕事はさせられませんが、本ケースでは、出社での勤務を前提に復職が判断されOKが出されていると考えます。
本人側が主治医からも意見が出ている、ということであれば、改めて意見書や診断書をもらうこともあると思います。
本人への対応
このようなケースでの本人への働きかけはどのようにすればよいでしょうか。
この方、もしかするといままでも「メンタルヘルス不調」という看板で、自分の要求を知らず知らず通してきたような経験があるのかもしれません。このような場合は、ルールや原則に従った対応が大切になる場合もあると考えます。
- 元職復帰の原則の中で、復帰直後は会社にて業務が行えていた
- 就業規則上も、雇用契約上も、在宅勤務を特別に許可する項目はない
- 部署異動の希望については、会社との面談や異動希望届の提出など、通常のルートで受け付ける
また、会社に対して条件を付けてくる従業員の中には、「権利意識」や「被害者意識」をつよく持つ場合もあります。会社側の言葉尻を捕まえて、反感をつよくしたり攻撃的になるケースもあります。会社側の考えを伝える場面などでは、複数人で対応したり、記録を取ったりする工夫も出来るのではないでしょうか。
本人視点で見てみましょう。メンタル不調からの回復途中でもある自分にとって、やはり気持ちが落ち着く場所や条件は、それぞれあるはずです。
少しでも心地よい場所で仕事がしたいと思うのは当然ではないでしょうか。再度出社しないといけない不安、対面での人間関係が再開される不安、人の目を気にして仕事をしないといけない不安、様々な不安が出てきているのかもしれません。
不安にとらわれてしまい、復帰後一定期間は出社出来ていたこと、業務もこなせていたこと、上司や同僚とも顔を合わせて仕事をしていたこと、意識から離れていることもあるでしょう。
面談時には、上記会社の考えを一方的に話すのではなく、まずは、復職者の気持ちを聴いてあげていただきたく思います。どうして出社することが不安なのか恐怖なのか、その理由をしっかりと聴いてあげていただきたいのです。
「甘え」という表現をしましたが、これは会社側からの視点です。本人側からは、「不安を下げるための行動」として理が通っていることもあります。「あなたはそう考えるのだね」ということは受け入れた上で、会社側の考えを伝えてみてはどうでしょうか。「やれていたこと」「出来ていたこと」なども話題にしていただくのもよいかもしれません。
不安はゼロにはなりませんが、ある程度の不安は抱えながらも行動していくことを目標にできれば、一番良いのかな、と思います。